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わが海の荒れやまぬ夏終わるらし あふむけの蝉返し歩かす
首藤絵美 (『螺旋般若』(短歌研究社:2003))
「わが海」は一夏を慣れ親しんだ眼前の海であるとともに作者の内に在る海であろう。
言うなればこころの混沌の喩である。
暗い心の混沌を受け容れていた夏、その夏が終わりつつある。

そして、下の句の光景は異様だ。死にゆく蝉を返して無理やりに歩かせる。
手足をばたつかせよろめく蝉。その蝉を主体は見つめるばかりである。
そうしているうちにふと蝉は作者自身にもなる。
自分自身を無理やり明日へと向かわせる。よろよろと。

苦しい歌だ。自分に課するこの過酷は何だろう。若さのもつ暗さ・苦しみか。
いや、そういう言葉では不十分なほどの過酷である。

『螺旋般若』は硬派の文体にこだわりをもつ首藤の第一歌集。
最新刊。
評:棚木恒寿 (2003/06/01)

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