一首評〈第23回〉

でも君の背後にいつも窓はあり咲いているその花の名は何
錦見映理子 『ガーデニア・ガーデン』(本阿弥書店:2003)

始まりの『でも』という言葉は何にかかっているのかと思う。
今、君がここにいるという事実だろうかと思う。
今確かに君はここに、わたしの前にいるのだけれど、
窓がある以上、君はいつだって飛び立つことができる。
もし君が飛び立つとしたら、君は何という名の花へと向かっていくのだろうか。
その名を知ったところで、わたしにはその花を摘むことなどできないのであろうが、
それでも、せめて名前だけでも知りたいのだろうか。

香山凛志 (2004年11月19日(金))