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かんたんに「原ばく落とす」とか言うな
わらうな
マユリーをつれて帰るな
今橋愛 (短歌同人誌 〔sai〕1号)
作者がタイ旅行に出かけたときの一連「スクンビットソイ33」より。
そのなかでもとくに印象的な一首。

主人公の無力さに胸が打たれます。

ポケットに両手を入れたまま、このように呟いたところで、
きっとマユリーを留めておくことはできないし、
マユリーを連れ去る「男」の背中に、原爆を落とすこともできません。


いまの世のなかにおいて、
詩ほど無力なものはないし、
短歌ほど無力な詩形はないでしょう。

けれどその、ちからのない地点から歌われたことばは。
短歌を知らない、日本語を解さない「男」へ向けられたことばは、
別のなにかを刺し貫いたのだと思います。

その穂先の血のひとしずくが、おそらくは「詩」と呼ばれるものです。
評:下里友浩 (2005/10/01)

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