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2017年03月08日(水)
追い出し歌会を行い今年度で卒業される先輩方を送り出しました。歌会後はくれないにて食事をしました。
※表記について:作者の名前の後に短歌を載せています。



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田島千捺

二〇一七年三月八日 京大短歌追い出し歌会
                          田島千捺

とろとろとあさく流れる冬の川おなじ鳶がいると思う日

むきだしの食品売り場の明るさでしゃべり言葉をひらいてほしい

阿波野さん

小説はよくわかんない ショッピングモールで買った服を着ていく

怒ったらちゃんといらだつみずうみの波はいったん沈んでうごく

おこだわり こだわりでなく誠実の発露であって秤にのせる

ウエーイ! ってきみが言うからウエーイ! とノッてみる  妙に間が空く
/榊原紘(2015年3月16日追い出し歌会)

お酒もっておっ? って言うからとりあえずはあ、って流しておく 先輩に

歩いてて散歩の犬や空き缶に散らばるさりげないかわいさだ


安田さん

詰め寄ってじゃないですかって森に火を持ちこむようにしている正座

えらいからとっくに起きて笑ってるあなたの洗う食器が鳴った

きみがいて、雪の降らない日々にいて小枝を拾いたくて屈んだ
/安田茜「twig」(『京大短歌22号』)

拾われるはずの小枝があったからあなたはかがんで見本をみせる

やさしさが透きとおるまで抱いている言葉のひとつひとつの茜

音楽の話をしていてそういえばうなづくときに僅かな発条が

牛尾さん

金沢
雪の日を歩くいつもの服だったふわふわのある緑の上着

思想がないと言っていたけど
自転車のチェーンを直す指先が黒くなる自転車の生活

節分は大きな祭り じゃがバターほぐしたいからいったん止まる

旅先でいちばん最後まで寝てるひとのふくらみ コンビニのパン

もたれたらあたまをもたれかえしたりする長旅の帰りの電車


あわのさんと安田さんと牛尾さん

ひとたちがいないとなると困ったな 居酒屋で聞くうろんな声の

長浜、たのしかった
神社までせまくて長い階段をのぼってばらばらに鈴鳴らす

刈りおえた田んぼを眺め電車では言うことと言わないことの窓枠

ボーダーの服がかぶってまだずっとたまに旅してぶちあがりたい





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寺山雄介

ありふれたわがままでいい野の原の立ちふさがる草に刃をあてがう

柔らかい町に住んで誰からも愛され風に揺られて眠る

薄口の醤油を少し落としつつ京都土産の金平糖を食む





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濱田友郎


  心のなかに広がるかぎりない長歌のとりいそぎ反歌のみ 濱田友郎



 牛尾さん

鴨を眺めにゆく道なりの教会を見るたび思いだすんだろうな



 阿波野さん

人生 これからくぐるたくさんののれんのことを言えたらいいな



 安田さん

やがて四月になる鴨川にぼくはいて水切りが上手にできたらな





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北虎叡人


複雑なかたちにあなたを光らせた これからぼくらさよならなんだ


あふれそう、でもあふれずの白い泡 ああさみしさは遅れてくるよ

 どうか
やわらかくくたびれているたのしさを忘れないまま、淡くみずたま


  *


やわらかく擦りへらすようだった歌あかい頬には猫あそばせて


おもいだすのみの橋梁とおざかるほどにゆきかう人びとは見ゆ

 そして
思い出すことは忘れたことでありなんどでも吹くたび風と会う


  *


後ろからおくりだす日々 今日という今日こそフェリーの抜ける海峡


自転車も手に入れ京都のゆうぐれにくだりゆくのを、ずっと見ていた

 しかし
とおざかるならうつくしくなお歌うぼくら とどくんかは知らんけど





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阿波野巧也
 

   暮春集(一)        阿波野巧也

二首以上つくれたひとには二首以上あります とくに意味はないです


ぼくとはまだくんと、三人で蛍みましたね。
疏水まで歩いて蛍見にいってあのときビール飲んでたかなあ

   *

お酒が好きそうでよいことです。たくさん飲んでいい歌つくってね。
日本酒をたのむ樟さん 人体の七割は日本酒でできている うそ

   *

自撮りのコツ、おしえてください。
詩も演劇も暗がりの花 すっとした笑顔の中に浮かぶ瞼(リーデルン)

   *

おっとりした話し方が素敵だなとおもっていました。
川のほとりに咲きならぶとき未来にもずっとずっと季節はあるかな

   *

まあ、いろいろとがんばれ。
北野ってtraditionalなとこだよね。秋陽のなかに跳ぶなわとびは
四ケタで時間を伝えるのはちょっとアレだとおもう アレですよアレ

   *

まあ、いろいろとがんばれ。pt. 2
こころに鉄砲話を撃ってやろうじゃん しかして詩歌つくづく続く

   *

長浜でいっぱい撮ってくれた写真、なんども眺めてしまうよ。
わーいって言うときに手のよい角度保って揺らす わーいって言う
たじまさんはいつでもよい距離感にいてその距離感に植物や花
川原泉、すすめてもらったのにまだ結局よめてないなあ
『笑う大天使』の1巻だけが丸善になかった、こないだもなかったのに
たちまちに時間のすすむ町のなか(なんでもいいよ)つづけた会話

   *

京大サロン、居眠りしたくなるよね。
たまに悲しくなる橋の上ゆくりなく川を見たとき凛として鷺

   *

地環の先生たちによろしく。
寺の字はテラメカニクスの寺である。←ここは院試で問われるかもね

   *

奥多摩の吟行で最前線を突っ切っていてかっこよかったです。
ダムから水の落ちる力をすこし身を乗り出して眺めてたのを眺めてた

   *

いけるとこまでいこう。越前、お前は青学の柱になれ。
結局ちゃんと行けてない八雲食堂でたらふく泡盛を飲まなくちゃ
いや〜ほんとうれしくなっちゃうな〜 ラーメンは魂で啜って呑め
無限に酒を飲めば無限になる時間 ハイネケン・アンド・ハイネケン・アンド・ウイスキー
奄美行きたみ。
マングローブで50首つくる吟行をやる 絶対にやろうね、やろう
八海山まだ飲みたらんと思わん?もうちょっと朦朧としようぜ

   *

北村さんにはたくさん迷惑をかけてしまった。
全力がかっこいいから全力で脱力もして咲いててほしい
きれいな日々に手向けの花を。雷鳴が咲いてまっすぐきみは歩いた

   *

われわれ、なんでこんなに丸くなっちゃったのかなあ。
失恋話を聴きながらでもラーメンがうまくてまいってしまう秋の日
風がやんだら詩がそこにある鴨川にふんわりそのひとは立っていた

   *

会うといつも通りの向くんで安心する。もっと歌会しようよ。
なんなんってなんなん いやこれはだめでしょ まあいいんじゃないですか、いいとおもいます
向かい側からこうやってまただめだしを言って最後は決まってそれだ

   *

くさむらに顔を突っ込んだ味、って村川さんは言った。
〈午後の死〉を名前で選んでつくってくれて結局ぼくが飲むはめになる

   *

☆ラーメン部
家系はほうれん草がのっていて身体にいいと口々に言う
「ラ」っていうメールを送る「今?明?」と返ってきたので「両」って返す
うつくしく汁を飲み干すひととして雨の天一の屋内にいる
引越しの当日なのに紫蔵ワンチャンあるかと言えばあるに決まってた
麺は大きな重力を持ち胃へしずむラーメン屋は巨大な重力場
とりのすけ前たむろしてたら中澤くんがスッ…とにぼへと入っていった
「暁」というメール送れば「ヒウィゴー…」で食べたよあかつきスペシャル2玉

☆2月、長浜
せっかくの旅行でみんなだまりこむ歌をかんがえたりねむったり
乾杯をしながらそれを撮ってたら遠くのたじまさんに撮られてた
いいんじゃないですか わたしは飲みません いい加減あきらめたらどうですか
にごり原酒を爆発させたその結果ほどよく済んでいる二日酔い
きみが言うからピザって10回言ったのに出してくれない10回クイズ
旅の終わりにどこへ行こうと旅だからぼくたちがたどりつくロッテリア

   *

後輩なのかどうかたまにわからなくなる
ひょえ〜って言うときあんましひょえ〜って思ってなさそう ひょえ〜って言う
すこしずつ余った皿をそっちへと寄せてく春の気配のように
牛尾さんちのこたつでだらけるぼくたちは東京で蘇るしかない
また関西で会いましょう
爪にひとつ見えない星をいつだって灯したままで待っているから

   *

いろんな音楽や、いろんな喜びを教えてくれて、ありがとう。
名指しながら植物園をあるくときこころにも椿をうつしとる
港へとむかえば出会う公園に仲良くさまざまなスケーター
珈琲のうえであなたのぐちを聞くあなたのために在りたいいつも
酔っぱらって電話をかけて寝落ちする薔薇みたいだよ夜の時間が
ところで君の音楽の趣味の少し偏屈なところが好きだった/andymori「誰にも見つけられない星になれたら」
カラオケできみが歌っていた曲を帰って聴いてさびしさがくる
ぐらぐらの頭さらに揺らしながら 君のことだけ考えている
いつか見た夏の海も冬の星も消えてしまうだろう 無くなってしまうだろう/andymori「Sunrise & Sunset」
海を見て海を見ているきみを見てまた海を見るそれだけだけど
東京でもどうか元気で。
きみと過ごしたどの季節にも鴨川があり鴨川をはなれてしまう
きみに出会えて、よかった。
歌のことばかりをいつもいつもしてきみは迷惑じゃなかったかなあ

   暮春集(二)

得たものは失っていくものだからあまねく花束へ燃え尽きろ

くつかむりって恥ずかしいけど言葉から言葉へと火をこころをつなぐ
あなたのアクセサリーを風にそよがすかのよう永久(とこしえ)にまなうらに火柱

2012年4月12日(木)、はじめて京大短歌に参加したときに、
未経験ゾーンに足を踏み入れて未来分岐を踏み潰してく
という歌を出した。短歌を批評するのもされるのももちろんはじめてだった。その時に出ていた他の歌。大森さんの〈さきに眠ったあなたからはみ出してきた夜を魚の薄さでねむる〉について、性愛の歌ですよね、ということが恥ずかしくて言えなかった。余計に恥ずかしかった。藪内さんの〈うつくしく傘を折りたたむひととして雨のさくらの樹の下にゐる〉を見て、言葉のしなやかさに惹かれた。廣野さんの歌の〈実景を六つに分ける窓〉というフレーズが、まじで、なんでこんなことを歌にするんだろう、とか思ってた。どういう意味があるのかよくわからない、と言った覚えがある。自分がこんなに短歌にのめりこむとは思っていなかった。ほんとうに、未経験ゾーンだった。

おむら屋のあとに4人で三条へむかってみにいったレイトショー

合宿の夜たべにいくラーメンのようなかがやきが確かにあった

五年間、さまざまな人を送り出してきて、そのたびにさびしくなってきた。
2013年、大森さん、駒井さん、吉國さん。2014年、廣野さん、小林さん、笠木さん、藪内さん。
2015年、坂井さん、榊原さん、山田さん。2016年、中山さん、橋爪さん、松尾さん。
他にも、追い出せずに京大短歌をやめてしまったひとたち。
群像は百万遍をながれゆきとどまる側がもっともさびし/永田紅『北部キャンパスの日々』
という歌がいつも胸のなかに流れていた。そして、

とどまらない側で百万遍をゆくさびしいのかなあ耳鳴りのように

ずっと疏水のそばでずーっと歌ってた。春には春の桜うかべて

なにもないフローリングに座り込み月日は赤い一瞬の薔薇

この句またがりは屈折感などではない
横隔膜の震えのように日々は過ぎほんとうに京都が好きだった

すべて失くした心の中で音楽が鳴りやまなくて鴨川にいた

左へカーブを曲がると 光る海が見えてくる/小沢健二「さよならなんて云えないよ」
きみを見てきみが笑った一瞬をそのいっしゅんでわすれてしまう

いつの日かこの町を出て行く僕らだから/THE BLUE HEARTS「休日」
さようなら 笹舟のようなひとときを歩いていって振り返らない

何にもかも忘られないよ お世話になりました/井上順「お世話になりました」
去るんだなあ 夜風にあたり歌う歌がなんで不思議とラブいんだろう





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牛尾今日子


でも歌でなくてもよかったということ鴨川を来ていつか言ったね



会わなくても元気だったらいいけどな 水たまり雨粒でいそがしい/永井祐

真菜
背の高いあなたの日々へ降る雨は(元気ならいい)私にも降る
朝比奈くん
すぐ何かけなしはじめるそのときも愛嬌だけはあるよねきみは

「その声は、我が友、李徴氏ではないか?」
とらくんが虎ならわたしは牛だから抱くほかない自尊と羞恥
北村ちゃん
喫茶店行くと言ったね とびきりのムカつく話を披露してこう
むきになっても本気(マジ)でやっても定型詩 ゆうべぴょんすと月をいく夢
しふうくん
おどろいてえっ、あっていうきみの声をかわいいとか思っちゃってごめんね
おしぼりを投げつけていけ ゆるさないことはいつでもゆるさないこと

完熟の黄身をめざして茹でているそれでいいのさ神慮は不審/大隅雄太
沸騰しおよそ十分不審ならそれより先は汝(なれ)の采配
初めての車のシートを一人でたおす 大人がひとり息をしている /樟鹿織
車を使うのは大人だと思ってた すぐに(いつから?)大人のじかん

わがうたにわれの紋章のいまだあらずたそがれのごとくかなしみきたる/葛原妙子
勝手かもしれないけれど百首くらい作ってよ紋章をかかげて
田島さん
お祭りのつらなる道を昇りきてほんとうのお祭りを見た夜
はしゃぎつつなお柔らかい声色であなたとつづく映画のはなし
寺山くんのおおきな連作を読みたい 歌集でもいい お願いします
小籠包か〜って笑いがとまらずに食べるはるさめスープ

進みたい道を見やればもう親がレールを敷いてくれてたらしい/川崎瑞季
好きなだけ門出と帰還をするだろう京都駅から路線図ひろげ
万国旗つくりのねむい饒舌がつなぐ戦争(いくさ)と平和と危機と/塚本邦雄
小林通天閣のうろんな饒舌が絡む短歌とネットと人と
高橋さん
アトラクション終えてるような落ちつきの、ふと目をやればよく眠る人

椰子を蹴れば匂いがするよこの感じ、こんなのは人生だからだめ/濱田友郎
こんなのが人生だから年金を職場で払う書類をかくよ
一切の濱田をほめて河原町

こうくんの歌は、しょうじきいままでに作ったのにもめちゃ混ざってる
死のはなし、生きる時間が混じり合い私に歌を詠ませる多く

やすださんともっと仲良くなりたいと思ってるって言えば(言うし)信じる(信じて)?
柄のない服のあなたのしずけさが気づけば笑みへ移りゆく夜
あなたごときに汚されるわけない夜の月を割るならきっぱり縦に/安田茜
わたしたちを汚すに値する人はいないよ月が見えかくれして

阿波野さんがいなければ歌をはじめたりのめりこんだりしていなかった
結果的にたどった道をそう呼べば運命なんだぜんぶがぜんぶ
ぼくらはぼくにもうならなくて三月の、ほんのり見える鴨川デルタ



鴨川に集ひし日日は移ろへど帰りてをゆかな京大短歌(けふたん)の辺に

短歌のための時間があった長浜のsingin' in the rain なんどでも

人はみな馴れぬ齢を生きているユリカモメ飛ぶまるき曇天/永田紅
ユリカモメがいつからいなくなったのか分からないまま春だね、行こう

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