一首評〈第18回〉

マンションに夜舞い降りたフラミンゴ照らされる時雨傘になる
金田光世 『京大短歌』 13号

目にした途端、様々な映像や色彩が頭の中を踊る一首である。
夜の闇に浮かぶフラミンゴの鮮やかなピンク、住民が寝静まりそれ自体がひとつの大きな生きもののようなマンション、雨と光のイメージの乱舞、大きく翼をひろげた鳥の姿に重なる雨傘…。
行為の主体を追求し意味を解釈しようとすれば、これは難解な歌なのかもしれない。
けれど私はそれよりも、この歌のもつイマジネーションの豊かさを楽しみ、その目眩めく魔法のような光景に酔いたいと思う。
そして、カーテンに隔てられた窓の外で今もそのような不思議な場景が繰り広げられていることを夢想したい。
マンションの部屋の中で眠っている私たちには、その魔法を目にすることは決して叶わないのだけれど。

この作者の歌は、今回選んだ以外の作品も、豊かな想像と直感、突飛でありながらリアリティをもった連想で満ち溢れている。
私たちの知らない世界への抜け道を、もしかしたら彼女は知っているのかもしれない。

生駒圭子 (2004年3月1日(月))