歌会の記録:2022年4月10日(日)

歌会コメント

新歓行事として鴨川デルタでの吟行歌会を開催しました。題は「川」と「桜」でした。

詠草

題詠「川」

コンディショナーを流して髪はくらがりの小川となりぬ 花冷えの夜/葉月

東から西から人が合流し無数の扉の並ぶ鴨川/真中遥道

キョロキョロと頭上の華に目もくれず鳥だ虫だと指差す桃川/畠野太誠

川岸にもうたくさんの外国のわらべがあそぶ陽気なデルタ/坂梨誠治

飛石をわたるグリムの軽やかさ小麦色たる童話の足で/野上武仁

鴨川を渡る子供の声聞こう寝てる暇などないことを知る/土田幹久

川底の石を見ていた 僕たちの確かにあり得た結末として/守田真希

春の底に二杯のシェーキ川石はぬるくなりつつ丸くなりつつ/松浦瞭馬

四万十で風に吹かれる鯉のぼりお堀の鯉は目を伏せ泳ぐ/齊藤ゆずか

つま先でペダル回せば川べりをひかりの筏ゆらゆらと発つ/小野りた

会いたいを川の水面にこぼすとき光って消えた彗星、きみの/三上麦

昼下がり昨夜見ていた天の川空に描いてもいちど逢瀬/三上麦

鴨川の春に混ぜてよ川縁の花屋で買ったチューリップ/福田紗菜

ボイジャーが太陽系外進むよう川沿い歩くやわらかな午後/朝香瑞希

この川を渡った先に夢はある飛び石を往く少年の蒼/長野響哉

膝小僧もぐりこませて歩く川春の重さを押しのけながら/武田歩

水面から突き刺し乱す白き足暑き川には春雷が隕つ/半空羅深








題詠「桜」

16時。風の角度に前髪をくずしたままで歩く時刻だ/葉月

突然の豪雨にきみを考える桜色のチーク落としつつ/朝香瑞希

さくらんぼ「んぼ」の部分を「んぼ」したら綺麗だねってそれっぽく言う/三上思

叶うなら、かばんの底の花びらに 春亡き後の残り香になりたい/山岸結衣

パスタゆでることだけ上手くなっていく春がゆでたる桜しなびて/野上武仁

この下に死体が埋まっているらしいいつかわたしも桜に還る/長野響哉

咲きそろう桜どれかは罪人抱きゆえに落花に情残るなり/松浦瞭馬

朔太郎氏の靴にじぶんの裸足(らそく)入れて朔太郎氏のくるしみを追う/坂梨誠治

引力は四方八方から降って桜にかかる世界の重さ/武田歩

北からの頼りは荒涼と春は遠きと桜待ちつつ/土田幹久

花吹雪空を見上げて駆け回る
取れた!取れたね 優しく包む/畠野太誠

あなたへの言葉を湛えているつぼみこぼれてしまう時を知らない/小野りた

ビギナーズラックなどなく 匿名の(花びらの)その僅かの叫び/

「んぼ」を消すblossoms と唱えてたおかしな私は散りつつある春/山本大地

春雨のぬるい風にも花は揺れ奏でる音のゆるい旋律/三上麦

葉桜に急かされ夏が走り出す そよ風にブラウスが揺れてる/三上麦

夜明け前 癒えない傷や乾かない涙みたいに花に残雪/三上麦
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