歌会の記録:2000年2月10日(木)

歌会コメント

歌会 参加者数17名
吉野亜矢さん、沼谷香澄さんゲスト参加。まれにみる盛況。

詠草

01 ゴングロの向こうにピント合わせれば油化粧の換気扇あり  大嶋元気

02 CDの音がきちきちとぶ夏に猫の忌日はとうに過ぎたり  田中あろう

03 仔犬屋でふてくされてるマルチーズ抱きかかえてもふたりは孤独  大谷良太

04 先達の粗な論文を睨むとき君のことを忘れている  柴田悠

05 雪来たるにおい確かめおもむろに冬のぬけがら残して発たん  田中克尚

06 如月の風少しずつ強まりてゴールネットに向かって走る  西之原一貴

07 精神腫瘍学を学べる君はるか 虹の袂にわれは老い初む  棚木恒寿

08 黒板に陽が射してきて前方の肩やわらかく揺れあいている  山内頌子

09 オレンジのゴムで束ねた髪の影薬品棚に映れば小鳥  村松美由紀

10 バス停のうすき灯「なぜ」とう語調にも似る異国語が背後を過ぎぬ  澤村斉美

11 向き合ひて牡蠣を嚥むとき青年の舌を思へば口中の酸  黒瀬珂瀾

12 鷺は一直線の白たたみたり波立ち割かれゆく夕焼け雲  森雅紀

13 雨のように降ることば 河のように流れることば 睡蓮ほどに眠い  吉野亜矢さん

14 さようなら? 桜揺らして去り際の鮫が背中を触っていった  沼谷香澄さん

15 わたくしの水は美味いかわが見ざる釣瓶を手繰るひと恋しかる  島田幸典

16 浴槽のふちにつま先引っかけてまじめに指の間も洗う  水野ふみ
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