歌会の記録:2000年2月25日(金)

歌会コメント

歌会 参加者数11名

詠草

01 空白の時に向かってゆくわれに降るこの雪を銀と呼びたし  西之原一貴

02 雪降れば衣々にわれ巻かれつつナチスよ美し、と思ひ至りぬ  黒瀬珂瀾

03 道行きの擬宝珠ぎぼしと並びし一枚をくろき読点とてわらひをり  澤村斉美

04 アパートの壁ごしに聞く靴の音少しためらひしのち雪を踏む  田中克尚

05 上向いて煙を吐けばまんまるい和紙照明は揺れてる感じ  上田茜

06 寒さとは逆のワライを浮かべるね黄色い「ビーフカレー」の旗は  柴田悠

07 田をつぶし柚子を植えるもさびしかるゆずの油の満ちる谷川  田中あろう

08 風のない午後と歌唄洗濯機泡の白白しろしろ全てを消して  井上リリー

09 春の夜はまだ宵ながら酔いながら草の枯穂に積むほどの雪  水野ふみ

10 いわば栞のように言葉を挟みしがいつしかうすく風邪引きている  棚木恒寿

[ひとこと評]
01 不在感、未来を思う気持ちが前向きに表された、さわやか短歌。「雪」と「銀」がつきすぎか。

02 ナルシスティック。「衣々」と「ナチス」のつながりがわからない。「衣々」をシーツと考えては?

03 「一枚」は写真のことか。擬宝珠と読点の結び付きならわからなくもないが。なぜ笑うのか、てがかりがほしい。

04 佐太郎チックだ。「少しためらひしのち」が、リアリズム的に問題になるだろうが、この歌はいい。静寂短歌。

05 明るい手持ち無沙汰の雰囲気。「まんまるい和紙照明」への着目がおもしろい。「〜感じ」という言い方が受け入れ難くもある。

06 ココ壱番屋だろうか。「ワライ」はあたたかい笑いのようだ。ひとりでも、ふたりであってもいい。ほっこり短歌。

07 焦点が2つあり過剰気味か。第3句はなぜ連体形?音のよどむ感じが「油」へとつながるのだろうか。

08 洗濯日和を歌ったものか。心のよどみを洗濯機にたくした歌だろうか。「全てを消して」といった強い言い方をもっといかしてはどうか。

09 寒いけれど気持ちがいいといった趣。「宵ながら酔いながら」が、だじゃれでおわってしまっている。

10 「栞のように言葉を挟む」はいい表現。「うすく風邪」は微熱っぽい。上と下の時制のずれでとまどう。加者数11名
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